「銀座でデート」

さてさて、どんな催眠術にすると聞いたら、好きな人とデートの夢を見させてほしいとお願いされました。

それでは、早速やってみましょう。
「こっちを見て、じっと見つめて」
「ゆっくり目を閉じて、目の前に階段があるよ」

「下向きに10段階段があります」
「その階段を下まで降りると、深い催眠に入ります」

「さあ、降りますよ、10・9・8・7・・」
「・・2・1、深い催眠に入りました・・」

「3つ数えます、3つ数えるとあなたの好きな人と銀座にいます」
「3・2・1、あなたの横にあなたの大好きな人が立ってますよ」

彼女は、とても緊張した様子になり始めたのが分かった。
「ここは、銀座です。彼と一緒に銀座を歩きましょう」
「彼は、いつもよりとてもやさしい感じがします」
「彼が手をつないでくれましたよ」

私が彼女の手を軽く握ると彼女はとても恥ずかしそうなしぐさになった。
どうやら、彼女は普段からあまり積極的ではなく、結構好きな人の前では恥ずかしがりやになってしまうタイプらしいのが分かった。

人は見かけによらないものである。ふむふむ。
「あなたも積極的に彼の手を握りましょう」
しかし、彼女はかなり緊張しているのか触れているのがやっとと言った感じであった。

かなり消極的なので、少し積極的に話をするように誘導してみる。
「2人きりで、デートはめったにできないですよ」
「しかも、彼はあなたのために時間を作ってデートしてくれてますよ」
「さあ、あなたから彼に話し掛けてみましょう」

しかし、彼女はもじもじするばかりで、彼に話し掛けられそうにありません。
大好きな人とやさしくデートしてると、こんな感じになってしまうのだろうか?
でも、なってるんだから間違いないね。

もっとも、この感じから(彼女の反応から)すると、実現しなそうな相手とのデートらしいのが想像される。

あっと、言うのを忘れてましたが、誰に会いたいかを私に話さなくてもちゃんと自分の思った人とデートはできるんですよ。
ご安心を。

どうやら、銀ブラだけでもとても満足しているようなので、夢(催眠)を解くことにします。

「さあ、彼とのデートは終わりです」
「この後、彼は用事があります」
「とても忙しいのにあなたとのデートに時間を作ってくれましよ」
「とてもやさしくて良い彼ですね」
「デートのお礼を言って、別れましょう」

やっと、彼女が話しました。
「今日はありがとう」
それは、とてもうれしそうな表情でした。

「3つ数えます、3つ数えると元の世界に戻ります」
「1・2・3、はい起きて!」

彼女は寝ぼけ眼で目がさめました。
楽しかった?と聞くと「うん」とうなずきました。

どうして話し掛けなかったのと尋ねると、恥ずかしかったから話し掛けられなかったと答えました。
銀座を歩いただけで満足してもらえるとは、よかったよかった。


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